陰陽寮(おんみょうりょう)は、律令国家のなかで天文、暦(こよみ)、占筮(せんぜい)、土地の判断、時刻の管理を担当した専門の官司です。物語に出てくるような、呪術を専門にする秘密組織ではありません。
この記事では、『養老令』の職員令に定められた役職の構成から、陰陽師が実際に任された仕事、博士たちが担った教育の役割まで、制度としての陰陽寮を見ていきます。
『養老令』の職員令によると、陰陽寮は中務省(なかつかさしょう)の下に置かれていました。役職には陰陽頭(おんみょうのかみ)、陰陽師、陰陽博士、暦博士、天文博士…
職員令では、陰陽師は「占筮・相地を掌る」とされています。吉凶を占うことと、土地や地勢を判断することが、制度上の仕事だったわけです。
陰陽博士は陰陽生を、暦博士は暦生を、天文博士は天文生を教えました。ここでいう博士は現代の学位ではなく、その分野を教授する官職の名です。
漏刻博士は、水時計である漏刻(ろうこく)を用いた時刻の管理に関わりました。役所の勤務や儀式の進行には、共通の時刻の基準が欠かせません。
当時の天文は、現代の天文学と同じものではありません。天体や空の色の異変を観測し、それを政治の秩序に関わる兆しとして朝廷へ報告する、天文占としての側面がありました。
01|中務省に属した官司
『養老令』の職員令によると、陰陽寮は中務省(なかつかさしょう)の下に置かれていました。役職には陰陽頭(おんみょうのかみ)、陰陽師、陰陽博士、暦博士、天文博士、漏刻博士などが定められ、学生や実務の担当者も配置されています。
つまり陰陽寮は、複数の専門分野が同居する役所でした。占いの担当と、暦を作る担当、天体を観測する担当、時刻を管理する担当が、それぞれ別に置かれていたことになります。
「陰陽寮の人=全員が陰陽師」ではありません。制度上の役割を分けます。
陰陽寮を統括する官職。
占筮・相地などの実務を担います。
陰陽・暦・天文の専門実務と教育。
水時計を用いた時刻管理。
国家実務を支える専門知の継承。
02|陰陽師が任されていた仕事
職員令では、陰陽師は「占筮・相地を掌る」とされています。吉凶を占うことと、土地や地勢を判断することが、制度上の仕事だったわけです。
一方で、妖怪退治や式神の召喚が主な職掌として書かれているわけではありません。制度のうえでの陰陽師と、後の時代に形づくられた術者の像がどう離れていったかは、陰陽師は本当に呪術師だったのかで整理しています。
03|博士は教えることも仕事だった
陰陽博士は陰陽生を、暦博士は暦生を、天文博士は天文生を教えました。ここでいう博士は現代の学位ではなく、その分野を教授する官職の名です。
専門技術を国家が継いでいくための仕組みが、役所の中に組み込まれていたということになります。三人の博士の役割の違いは陰陽寮の三博士で、上級の学生の制度は得業生で詳しく扱っています。
04|水時計で時刻を管理する
漏刻博士は、水時計である漏刻(ろうこく)を用いた時刻の管理に関わりました。役所の勤務や儀式の進行には、共通の時刻の基準が欠かせません。
陰陽寮は占いだけの機関ではなく、暦と観測、そして国の標準となる時刻を支える部署でもありました。日付と時間を決める仕事が一つの役所に集まっていたと考えると、その位置づけが見えてきます。
05|当時の「天文」が意味したこと
当時の天文は、現代の天文学と同じものではありません。天体や空の色の異変を観測し、それを政治の秩序に関わる兆しとして朝廷へ報告する、天文占としての側面がありました。
観測の記録が残っていること自体は現代の研究にも役立っていますが、報告の目的が違ったことは押さえておきたいところです。この違いを踏まえると、史料に出てくる「怪異」の記事の読み方も変わってきます。
06|もう少し調べたいときは
陰陽寮について調べるときは、まず『養老令』の職員令にある陰陽寮条を読むのが近道です。役職名と職掌が短く並んでいるので、後世の物語との差がはっきり分かります。暦や天文の用語でつまずいたら、国立天文台の暦計算室「暦Wiki」のような公開解説から当たっていくと進みやすくなります。