契約書の項目が「甲は乙に対し」と始まるのを見たことがあるでしょう。あの甲と乙は、十干(じっかん)という十個の記号の最初の二つです。十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の並びを指します。

いまは陰陽五行や占術の文脈で目にすることが多いものですが、出発点から性格を十タイプに分ける占いの記号だったわけではありません。古代中国で日を数えるために使われ、のちに五行や陰陽、暦、術数と結びついていきました。その順番を追うと、全体の見取り図がつかめます。

この記事の整理軸
01もとは日を数えるための並び

甲から癸まで順に用いると、十日でひと巡りします。古い暦日の表現では、「甲の日」「乙の日」というように日を見分けるために使われました。一週間が七日で回るのと同…

02五行と陰陽をどう当てはめるか

後世の陰陽五行の体系では、十干を五行へ二つずつ配当します。

03「甲は大木、乙は草花」という説明について

十干を樹木や草花、太陽や灯火といった具体的な自然物に置き換える説明は、覚えるときには便利です。丙は太陽、丁はろうそくの火、といった具合に情景が浮かぶからです。

04十二支との違い

十干は十個、十二支は十二個の系列です。この二つを一つずつ同時に進めて組み合わせると、甲子・乙丑……と続く六十通りの干支になります。

05年だけでなく、日や時刻にも使う

十干や干支は、年の呼び名だけのものではありません。日にも配当され、術数の世界では日干が重要な入力になる体系があります。六壬神課でも、日の干支は盤を立てるための基礎情報です。

01|もとは日を数えるための並び

甲から癸まで順に用いると、十日でひと巡りします。古い暦日の表現では、「甲の日」「乙の日」というように日を見分けるために使われました。一週間が七日で回るのと同じ発想で、十日で回る目盛りだったわけです。

この十進の系列が十二支と組み合わされ、六十干支というより大きな時間の循環を作ることになります。

02|五行と陰陽をどう当てはめるか

後世の陰陽五行の体系では、十干を五行へ二つずつ配当します。

  • 甲・乙=木
  • 丙・丁=火
  • 戊・己=土
  • 庚・辛=金
  • 壬・癸=水

そのうえで、各組の前者を陽、後者を陰とします。日本ではこの陽を「兄(え)」、陰を「弟(と)」に見立てました。甲は木の兄で「きのえ」、乙は木の弟で「きのと」、丙は火の兄で「ひのえ」という具合です。読み方に迷ったときは、五行の名前に兄か弟を付けると考えれば、十通りとも自力で組み立てられます。

十干は五行へ二つずつ、さらに陽と陰へ分ける

各五行で前者を陽、後者を陰として整理すると、十干の対応が一度に見渡せます。

木甲・乙

甲=陽、乙=陰。

火丙・丁

丙=陽、丁=陰。

土戊・己

戊=陽、己=陰。

金庚・辛

庚=陽、辛=陰。

水壬・癸

壬=陽、癸=陰。

03|「甲は大木、乙は草花」という説明について

十干を樹木や草花、太陽や灯火といった具体的な自然物に置き換える説明は、覚えるときには便利です。丙は太陽、丁はろうそくの火、といった具合に情景が浮かぶからです。

ただし、それらの比喩を十干そのものの定義として固めてしまうと、後世に整えられた象意と、もとの体系が混ざってしまいます。記号としての十干、五行・陰陽の配当、後世の比喩的な象意。この三つは別の層にあるものとして分けて眺めると、流派ごとに説明が違う理由も見えてきます。

04|十二支との違い

十干は十個、十二支は十二個の系列です。この二つを一つずつ同時に進めて組み合わせると、甲子・乙丑……と続く六十通りの干支になります。

日常の会話では「今年の干支は午」のように十二支だけを干支と呼ぶことがあります。けれども暦法のうえでの干支は、十干と十二支を合わせたものです。古い文献の日付を読むときは、この違いが効いてきます。

05|年だけでなく、日や時刻にも使う

十干や干支は、年の呼び名だけのものではありません。日にも配当され、術数の世界では日干が重要な入力になる体系があります。六壬神課でも、日の干支は盤を立てるための基礎情報です。

ですから「十干とは生まれ年の属性のこと」とだけ覚えると、使い道をかなり狭く捉えてしまいます。古い日記や記録に出てくる日付も、この配当を知っていれば読み解けるようになります。

06|覚えるならこの順番で

十干は、甲乙丙丁から始まる十個の時間記号が核にあり、そこへ陰陽五行の配当が重なって、暦や方術、占術へと用途が広がったものです。まずは十個の並びと読み方を声に出して覚え、次に五行と兄弟(えと)の対応を重ね、象意の話はその後で触れてみてください。この順で進めると、どの説明がどの層の話かを自分で見分けられるようになります。

07|参考・出典