孫子を名言集で終わらせない会社がある
『孫子』は引用しやすい古典です。「戦わずして勝つ」「彼を知り己を知れば」といった言葉は、会議の冒頭や研修資料でよく見かけます。ただ、その多くは一文を借りるところで止まり、翌日の仕事の進め方までは変わりません。
NIコンサルティングは、そこから一歩進んだ事例です。同社は公式に「孫子兵法《特別》コンサルティング」を掲げ、孫子を現代企業の戦略・マネジメント・リーダーシップ・人材育成・営業力強化へ応用しています。企業の公式サイト上で孫子兵法の活用を明示し、サービスとして体系化しているため、証拠強度はAと判断できます。
「読む」ではなく「経営へ翻訳する」
同社は孫子を単なる名言集としてではなく、企業経営へ翻訳するための枠組みとして扱っています。公式ページでは「算多きは勝ち、算少なきは勝たず」「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」などを取り上げ、戦略診断や事業領域の設計、営業・組織運営へ接続しています。
代表の長尾一洋氏も、公式プロフィール等で「孫子兵法家」を掲げています。長年のコンサルティングと経営実践をもとに、孫子の知恵を現代経営へ応用してきた立場です。古典の解釈を語る人ではなく、経営の現場で使う人として名乗っている点が、この事例の性格をよく表しています。
始計篇――戦う前に測るという発想
始計篇は、行動を起こす前に条件を比較し、勝算を測ることを重視する篇です。五事七計という形で、目的・時機・環境・指揮官・制度を並べて敵味方を比べます。
NIコンサルティングが公式に示す戦略診断や事業条件の可視化は、この「戦う前に測る」という考え方を現代経営へ翻訳した代表例として読めます。勘や勢いで新規事業を決めるのではなく、判断材料を先にそろえるという順序です。
謀攻篇――正面衝突だけを競争と考えない
同社自身が「戦わずして人の兵を屈する」を経営へ引用しています。この一節は謀攻篇のもので、正面から叩き合うことを最上とはしない立場を示します。
競合と同じ土俵で価格や物量を競うのではなく、戦略設計によって有利な条件を先に作る。この発想と謀攻篇との接続は、公式資料の上でもはっきり読み取れます。
用間篇との比較は、あくまで補助線
ここからはRayne-Labによる補助的な比較分析です。営業活動の可視化や情報共有を重視する同社の仕組みは、意思決定に必要な情報を軽視しない用間篇と並べて考えることができます。
ただし、個々のDX機能すべてを同社が用間篇から直接設計したと断定するものではありません。公式に明示されている接続と、こちらが後から重ねた読み方は、分けて受け取ってください。
自社で真似できるところ
この事例から持ち帰りやすいのは、引用の量ではなく使い方です。古典の一節を標語として掲げるだけでは、判断は変わりません。「算多きは勝ち」を自社に当てはめるなら、意思決定の前にどんな数字と条件を並べるのかを、様式として決めておく必要があります。
営業の場面でも同じです。誰がどの案件のどこで止まっているのかが見えていなければ、情報を重視するという方針は成立しません。孫子を経営へ持ち込むというのは、言葉を借りることではなく、こうした手順を作ることだと考えると分かりやすくなります。
出典・確認先
- 株式会社NIコンサルティング公式「孫子兵法《特別》コンサルティング」
- 同社公式 孫子兵法関連書籍・セミナー・代表者プロフィール
※企業の公式サイトが明示している活用と、Rayne-Labによる篇別の比較は、分けて記載しています。