診断の結果を読んで、説明がとてもきれいに感じられた。それなのに、実際の一週間を振り返ると、書いてあることと自分の行動がどうもかみ合わない。自己理解を進めていくと、多くの人がこの場面に行き当たります。

五行観測モデルのNOWは、「今、この場面で実際に何が起きているか」を見る層です。行動資源が自然に出やすいかというWHATとは分けて、今その特性を使えるのか、どれくらい出ているのか、負荷はどうか、続けられるのか、結果はどうだったのかを現実から観測します。

同時にNOWは、HOW・WHY・WHAT・FLOWで立てた仮説を現実で確かめる場所でもあります。どれだけ説明が整っていても、現実に合わなければ理論側を直します。

理論を守る護符ではなく、理論を映す鏡だと考えてください。映った像が思っていたものと違うとき、割るのは鏡ではなく、こちらの読みのほうを直します。

NOWで集めるもの

NOWでは、現在状態をいくつかの観点へ分けます。

  • 利用可能度:今、その特性を必要な場面で使えるか
  • 発現量:実際の行動へどのくらい出ているか
  • 負荷:時間・注意・疲労など、使うためにどの程度のCostがかかっているか
  • 持続可能性:同じ使い方を無理なく繰り返せるか
  • ゲート条件:何が満たされるとGOし、何があるとSTOPするか
  • 結果:その使い方によって現実に何が起きたか
  • 観測根拠:その判定を支える具体的な発言・行動・記録・出来事は何か

ここでの数値や状態は、人物の固定的な特性値ではありません。同じ「土|調整」が自然に出やすい人でも、平常時と繁忙期では発現量や負荷が変わります。

さらに、似た場面でも同じことが起きたか、反対の事例や例外はなかったかまで見ます。「私はこういう人です」という自己イメージではなく、いつ、どこで、何が起きたかという粒度まで下ろすことが出発点です。

事実と解釈を混ぜない

NOWでは、四つのものを分けて扱います。診断結果、実際の行動や出来事や判断、その結果どうなったか、そして五行観測モデルでの解釈です。

たとえば「今週、他部署からの相談を4件引き受け、そのうち3件を当日中に調整した。自分の定例資料は翌日に持ち越した」は現実の出来事です。そこから「土|支援・調整の発現量が多く、選別や分担への接続が不足しているのではないか」と考えるのは解釈です。この二つを同じ欄に書くと、自分で作った解釈を、その解釈の証拠として使うことになりかねません。

まず普通の言葉で書いてから、五行へ置く

出来事を最初から「これは水の過剰だ」「木→火が詰まっている」と書き始めると、あとから現実のほうを理論に合わせて思い出してしまうことがあります。記憶は思ったより、いま持っている枠組みに引っぱられます。

ですから、まずは普通の言葉で「相談4件を引き受けた。3件は当日対応した。自分の資料は翌日に延びた」と書いてください。五行のどこへ置けるか、どのFLOWが起きたかを考えるのはそのあとです。答えを見てから問題文を書き換えない。この順番がNOWでは効いてきます。

三つの使い方

一つ目は、現在状態を知ることです。今の発現量・負荷・持続性・結果を観測し、「特性は高いのに今は使えない」「同じ成果でも以前より低い負荷で出せている」といった違いを見ます。

二つ目は、仮説を確かめることです。仮説に合う事例だけでなく、合わない事例も同じ熱心さで探します。

三つ目は、布陣を変えた後の変化を見ることです。3か月前と現在で、特性値そのものではなく、巡り・負荷・持続性・結果がどう変わったかを比べます。現実を見て、仮説を作り、試して、また現実を見る。この循環が継続観測の中心になります。

診断と現実が食い違ったら

診断では「こういう傾向」と出ているのに、実際の行動が違う。そんなときに、すぐ「本人が自分をわかっていない」と結論づけることはしません。先に確かめることが、いくつもあります。

  1. 実際の出来事を、具体的に書けているか
  2. 五行への当てはめ方が間違っていないか
  3. 同じ場面・同じ期間を比べているか
  4. 自然に出やすい行動資源と、今の発現量・負荷、経験で身につけた技能を混ぜていないか
  5. 締切・役割・環境などの条件が働いていなかったか
  6. 実際にはどんな順番で考えたか
  7. どんな理由で動き、どんな理由で止まったか
  8. 訓練で身につけた技術ではないか
  9. そもそも診断の読み方や対応表が間違っていないか

これらを見直しても合わないのであれば、理論側の仮説を保留するか、直すか、捨てます。現実のほうを例外扱いして理論を残す選択は取りません。

「気づいていないだけ」で理論を守らない

反対の事例が出るたびに「本人が自覚していないだけ」と説明すれば、どんな結果が出ても理論を正しいままにできてしまいます。便利ですが、それは説明ではなく言い訳です。

間違う可能性があるからこそ、仮説には意味があります。外れる条件を持たない説明は、当たっても情報を増やしません。

「何が起きたら外れるか」を先に決める

たとえば「土|調整の発現量が多く、本人の負荷を上げている」という仮説を置いたとします。似た場面でも、調整案件が増えた日に本人の負荷が上がらない事例が何度も出れば、その仮説は弱まります。

さらに「相談件数は同じでも、緊急度を選別して他者へ渡した週は、自分の仕事を持ち越さなかった」と分かったなら、問題は単に「調整を使いすぎる」ことではなく、調整の前後に選別・分担が入るかにあるのかもしれません。

仮説を守るのではなく、外れる条件を先に持つことで、説明の精度を上げます。

一度の出来事で人格を決めない

一回の失敗や成功は、仮説のきっかけとしては十分です。ただ、それだけで「私はこういう人だ」と固定してしまうと、その後の観測がすべてその結論を確かめるためのものになってしまいます。

同じ場面、あるいは意味の近い場面で、似たことが何度も起きるかどうか。くり返しが確認できてはじめて、傾向として扱えます。

反対の事例を探す

仮説に合う事例だけを集めれば、どんな説明でも正しく見えてきます。そこで意識的に、この説明では説明できない出来事はないか、と探しにいきます。

見つかった反例は、邪魔なデータではありません。モデルを良くするための情報であり、どこまでなら説明が通用するのかという境界線を教えてくれます。

仮説の状態を残しておく

仮説は、当たりか外れかの二択で片づけません。今のところかなり合っている「支持」、一部は合うが条件がつく「部分支持」、まだ情報が足りない「保留」、説明を変えたほうがよい「修正」、現実と合わなかった「反証」といった形で状態を残します。

反証された仮説も消しません。どこで外れたかという記録が、次の改善材料になるからです。

試す前に、成功と失敗の条件を決める

五行布陣で何かを変えるときは、結果が出る前に二つを決めておきます。何が起きたら効いたと考えるか、何が起きたら違ったと考えるか、です。

結果を見たあとで成功条件を決めると、どんな結果でも成功に読めてしまいます。先に線を引いておくことが、自分に対する誠実さになります。

分析を止める目安

自己理解は、掘ろうと思えばいくらでも掘れます。ただし、今の問題をある程度説明できて、同じような行動が何度か確認できて、主な詰まりが見えて、小さく試せる打ち手が作れたなら、そこで一度止めてかまいません。

これ以上細かく分類しても打ち手がほとんど変わらない、という状態も止めどきの合図です。必要な深さまで観測して、次の一手が見えたら動く。分析の精度より、試行の回数が効く場面は多くあります。

NOWを自分で回す5つの質問

  1. その仮説を支える、具体的な出来事は何ですか?
  2. 同じような場面で、反対の事例はありませんか?
  3. 診断結果と現実が違うとき、何を混ぜている可能性がありますか?
  4. 何が起きたら、その仮説を直しますか?
  5. 小さく試したあと、何を見れば効果を判断できますか?

今日から始めるなら

NOWの役割は、現実に合わない仮説を壊し、より合う説明へ直せるようにしておくことです。診断より現実を優先し、反対の事例も探し、試す前に成功と失敗の条件を決めて、試したらもう一度現実を見る。

まずは直近の一件を、五行の言葉を使わずに三行で書いてみてください。何をしたか/結果どうなったか/どのくらい負荷があったか。 できれば「なぜそう判断したか」も一言添えます。その記録が増えるほど、3か月前と現在の巡りや負荷の変化を、根拠つきで振り返れるようになります。

戦略的視点のまとめ|仮説には「いつ見直すか」まで書く

今はよく当てはまる仮説でも、環境や役割が変われば説明力は下がります。過去の観測が正しかったことと、現在も正しいことは同じではありません。

戦略面では、仮説を作る時に「何が起きたら修正するか」だけでなく、「いつ再確認するか」も決めます。次の試行後、一週間後、役割が変わった時など、見直す地点を先に置き、古い観測を現在の事実として使い続けないようにします。

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※NOWは、五行観測モデルで検証を続けている考え方です。現在状態の観測と、仮説の支持・修正・反証に使います。医療・心理状態を行動から推定するためのものではありません。