神社の由緒書きに「式内社」と書かれているのを見かけたことはないでしょうか。これは、平安時代に成立した法制書『延喜式』の巻九・巻十、いわゆる神名帳(じんみょうちょう)に名前が載っている神社を指す言葉です。
國學院大學の延喜式内社データベースによれば、『延喜式』は延長5年(927)に成立し、神名帳には全2861社・3132座が記載されています。まずはこの数字の意味からほどいていきます。
式内社は、とても古い神社をほめる言葉ではありません。あくまで『延喜式』神名帳に載っているかどうかを基準にした歴史用語です。神名帳に載っていない古社もたくさんあります。
神名帳では、神社の数を「社」、祀られている神座の数を「座」で数えます。一つの社に複数の座が数えられる場合があるため、2861社と3132座という二つの数字が並ぶことになります。
古代の式内社が現在のどの神社にあたるのか、はっきり定まっていない場合があります。そのとき、複数の候補が「論社(ろんしゃ)」として挙げられます。社名の変化、遷…
神名帳には、大社と小社、官幣(かんぺい)と国幣(こくへい)といった祭祀上の区分があります。ただし、これを現代の神社ランキングのように受け取るのは適切ではありません。
歴史のうえで重要であっても、『延喜式』神名帳に載っていない神社はあります。こうした神社を、文脈によって式外社(しきげしゃ)と呼ぶことがあります。
01|「古い神社」という意味ではない
式内社は、とても古い神社をほめる言葉ではありません。あくまで『延喜式』神名帳に載っているかどうかを基準にした歴史用語です。神名帳に載っていない古社もたくさんあります。
一方で、式内社であることは、その神社、あるいはその前身となった祭祀が、平安時代の国家祭祀の制度のなかで記録されていたことを示す重要な手がかりになります。名前が残っているという事実そのものに価値があると考えてください。
02|「社」と「座」で数が違う理由
神名帳では、神社の数を「社」、祀られている神座の数を「座」で数えます。一つの社に複数の座が数えられる場合があるため、2861社と3132座という二つの数字が並ぶことになります。
この違いを知らないまま資料を読むと、「どちらが正しい式内社の数なのか」と迷ってしまいます。社の数と座の数は別のものを数えている、と覚えておけば混乱しません。
一社に複数の神座が数えられるため、社数と座数は一致しません。
神社という単位を数えた数。
祀られる神座を数えた数。一社に複数座の場合があります。
03|論社が生まれるわけ
古代の式内社が現在のどの神社にあたるのか、はっきり定まっていない場合があります。そのとき、複数の候補が「論社(ろんしゃ)」として挙げられます。社名の変化、遷座、合祀や分祀、廃絶、地名の移り変わりなどが積み重なるためです。
つまり、いま同じ名前の神社があるからといって、そのまま古代の式内社だとは限りません。神社の公式由緒だけでなく、地名、古記録、考古学の成果、歴史地理の研究を重ね合わせて判断することになります。
04|大社・小社、官幣・国幣の見方
神名帳には、大社と小社、官幣(かんぺい)と国幣(こくへい)といった祭祀上の区分があります。ただし、これを現代の神社ランキングのように受け取るのは適切ではありません。
こうした区分は、当時の国家祭祀の仕組みや幣帛(へいはく)の扱いに関わる制度上の分類です。現在の御神徳や参拝者の多さ、神社の「強さ」を示す尺度ではないと理解しておきましょう。
05|式外社をどう位置づけるか
歴史のうえで重要であっても、『延喜式』神名帳に載っていない神社はあります。こうした神社を、文脈によって式外社(しきげしゃ)と呼ぶことがあります。
「式内社は由緒正しい、式外社は格下」といった価値づけはできません。掲載の有無は史料の上での分類であり、いまの宗教的な価値や歴史的な重要性を単純に決めるものではないからです。
06|旧国や国府と重ねて読む
神名帳は旧国や郡ごとに整理されています。そのため式内社を地図の上で追うときは、現在の都道府県だけで区切らないほうが見通しがよくなります。
国府、一宮、総社の位置を重ねてみてください。古代から中世にかけての祭祀と行政が、どんな位置関係で結ばれていたのかが浮かび上がってきます。
07|由緒書きを読むときの確かめ方
由緒書きに「式内社」とあったら、確定した比定なのか、有力な候補なのか、複数ある論社のひとつなのかを見分けてみてください。たいていは由緒書きの言い回しや、市町村の文化財案内に手がかりが書かれています。
もう一歩踏み込みたいときは、國學院大學の延喜式内社データベースでその社名を引いてみるのがおすすめです。旧国名から探せるので、近くの式内社をまとめて拾うこともできます。社格の制度そのものに興味が向いたら、下の記事へ進んでください。