神社の由緒書きを読んでいると、「武蔵国(むさしのくに)」「出雲国」「伊勢国」といった地名が当たり前のように出てきます。これらは今の都道府県ではなく、古代の律令国家が用いた地方行政の区分です。一般に令制国(りょうせいこく)、あるいは旧国と呼ばれます。
國學院大學の延喜式内社データベースでは、旧国を全68か国として整理しています。神社を調べるときに何度も顔を出す単位なので、ここで押さえておくと後が楽になります。
理解の入口としては「昔の都道府県」と考えて構いませんが、制度そのものは現代とかなり違います。律令制では国の下に郡や里(のちの郷)が置かれ、中央から派遣された…
『延喜式』神名帳(じんみょうちょう)に載る神社は、旧国と郡の単位で整理されています。そのため式内社、一宮、総社、国府の関係を調べようとすると、現在の県名だけ…
近代に府県の制度が整ってからも、旧国の名は消えませんでした。地名、駅名、学校名、神社の由緒、工芸品や産物の名称など、さまざまな場所に長く生き続けています。
神社を調べるときは、現在地と旧国を別々にメモしておくことをおすすめします。両者を一つの欄にまとめてしまうと、後で式内社や一宮をたどるときに混乱のもとになります。
お住まいの地域や、よく訪れる神社がどの旧国に属していたのかを調べてみると、旧国という単位が一気に身近になります。そのうえで同じ旧国の一宮や総社を探せば、点で…
01|「昔の県」と言い切れない理由
理解の入口としては「昔の都道府県」と考えて構いませんが、制度そのものは現代とかなり違います。律令制では国の下に郡や里(のちの郷)が置かれ、中央から派遣された国司(こくし)が地方の行政を担っていました。
国には大国・上国・中国・下国という等級もありました。ただし、これを人口の多い順に並べたランキングのように読むと実態から外れます。等級は複数の事情を踏まえて定められたものです。
02|神社史で旧国が欠かせないわけ
『延喜式』神名帳(じんみょうちょう)に載る神社は、旧国と郡の単位で整理されています。そのため式内社、一宮、総社、国府の関係を調べようとすると、現在の県名だけでは位置関係がつかめないことが出てきます。
一つの都道府県の中に複数の旧国が収まっている場合もあれば、逆に一つの旧国が今の複数の県にまたがっている場合もあります。「同じ県内だから近い」とは限らない、というのが実感しやすい例でしょう。
旧国という地理レイヤーを重ねると、式内社・国府・一宮・総社の関係が見えやすくなります。
古代の地方行政区分。現在の都道府県境とは一致しません。
『延喜式』神名帳は旧国・郡単位で神社を整理します。
各国の地方行政の中心。国司の政務・祭祀と関係します。
地域祭祀や主要社の位置関係を読む手掛かりです。
03|制度が終わっても名前は残った
近代に府県の制度が整ってからも、旧国の名は消えませんでした。地名、駅名、学校名、神社の由緒、工芸品や産物の名称など、さまざまな場所に長く生き続けています。
歴史や文化を読み解くための、もう一枚の地理のレイヤーと考えると分かりやすいはずです。現代の住所とは別に、旧国の名前を覚えておく価値はそこにあります。
04|旧国を使って調べるときのコツ
神社を調べるときは、現在地と旧国を別々にメモしておくことをおすすめします。両者を一つの欄にまとめてしまうと、後で式内社や一宮をたどるときに混乱のもとになります。
また、旧国の境界や国府の所在地には、研究上の推定が含まれる場合があります。現代の住所と同じ精度で地図上に線を引けるわけではないという点は、頭の片隅に置いておいてください。
05|まずは自分の土地から
お住まいの地域や、よく訪れる神社がどの旧国に属していたのかを調べてみると、旧国という単位が一気に身近になります。そのうえで同じ旧国の一宮や総社を探せば、点で見ていた神社が線でつながり始めます。神社めぐりの順番を旧国で組み立ててみるのも面白い試みです。