「全部大事」が、一番危ない

仕事も勉強も副業も健康も人間関係も大事。

全部正しいので、全部やろうとします。

すると、どれも終わらない。重要なものへ時間を寄せられず、毎日「今日は何も進まなかった」という感覚だけが残ります。

この状態で必要なのは、効率化だけではありません。

優先順位ではなく、非優先順位を決めることです。

トレードオフは「何を失うか」を選ぶこと

戦略では、ある選択をすると別の選択が取りにくくなります。

時間を一つの案件へ集中すれば、別の案件は遅れます。高品質を追えば、速度やコストに影響が出ます。全部の顧客へ対応すれば、一人あたりに使える資源は薄くなります。

トレードオフとは、単に「優先順位をつける」より重い考えです。

何を選ばないかまで決めるからです。

九変篇は「攻めない場所」を明記する

『孫子』九変篇には、次の列挙があります。

途有所不由、軍有所不擊、城有所不攻、地有所不爭、君命有所不受。

通らない道がある。攻めない軍がある。攻めない城がある。争わない土地がある。

ここで重要なのは、すべての機会へ反応しないことです。

「敵がいるから攻める」「道があるから通る」ではなく、目的と状況に照らして、選べるけれど選ばない判断を持ちます。

「やらないこと」は怠慢ではない

個人の仕事へ置き換えると、やらないことを決めるのは怖いものです。

SNSを一つやめれば、機会を逃すかもしれない。資格勉強を止めれば、将来後悔するかもしれない。会議を断れば、関係が悪くなるかもしれない。

だから全部残します。

しかし、残した選択肢にも維持コストがあります。

開きっぱなしのタスク、毎週の会議、更新していないSNS、なんとなく続けている勉強。これらは少しずつ注意力を使います。

戦略的な「やらない」は、未来の可能性を永久に捨てることではありません。

今は資源を置かないと決めることです。

「拙速」とトレードオフは少し違う

『孫子』作戦篇には「兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなり」という有名な一節があります。

これは、完璧を目指して戦争を長期化させる弊害に近い話です。

トレードオフと関係はありますが、「やらないことを決める」という意味では九変篇のほうが直接的です。

原典の一節を、便利なキャッチコピーへ無理に合わせないことも大切です。

五行観測モデルでは「布陣」の中心テーマ

第6層「布陣」で考えるのは、何を増やすかだけではありません。

  • 何を自分でやるか
  • 何を任せるか
  • 何を仕組みに渡すか
  • 何を後回しにするか
  • 何をやめるか

ここで「全部自分でやる」は布陣ではありません。単なる抱え込みです。

自分の行動資源が分かっても、すべての場面で全部使う必要はありません。

むしろ、自分が強い領域ほど依頼が集まり、やりすぎることがあります。

戦略では、強みを使う量まで決めます。

3分ワーク|今週の「攻めない城」を一つ決める

現在進行中のタスクを全部書き出します。

その横へ三つの記号をつけます。

  • A:今週やる
  • B:今月でよい
  • C:今はやらない

Cが一つもないなら、もう一度見直します。

次に、Cへ入れたものの中から一つ選び、

「やらないことで失うもの」 「やらないことで守れるもの」

を一行ずつ書きます。

失うものだけ見ていると、捨てる判断はできません。守れる資源まで見て、初めてトレードオフになります。

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出典・研究メモ

※現代の仕事における「やらないこと」はRayne-Labによる抽象化です。軍事上の命令拒否や法令違反を一般化する意図はありません。