SWOTを書いたのに、結局どう動くか決まらない
SWOT分析は有名です。
- Strength:強み
- Weakness:弱み
- Opportunity:機会
- Threat:脅威
四つに分けて書くだけなので、初めてでも使いやすい。一方で、実際にやると「強み:コミュニケーション力」「機会:AI市場が伸びている」のような言葉が並び、そこで止まりやすいフレームでもあります。
問題はSWOTそのものではありません。
棚卸しと戦略を同じ作業だと思ってしまうことです。
棚卸しは「何があるか」を見る作業です。戦略は、その材料を見たうえで「何に寄せ、何を捨てるか」を決める作業です。
『孫子』始計篇は、この間を埋めるヒントを持っています。
五事七計は「戦う前に何を見るか」を細かくする
始計篇では、まず次の五つを観測します。
一曰道、二曰天、三曰地、四曰將、五曰法。
Rayne-Labでは現代へ抽象化すると、次のように読みます。
- 道:目的や利害はそろっているか
- 天:時機や外部環境はどうか
- 地:置かれた条件や制約はどうか
- 将:判断と実行を担う人はどうか
- 法:役割・資源・運用は機能するか
さらに七計では、目的の共有、将の能力、天時・地利、制度の実行、兵力、訓練、賞罰の明確さといった観点を相対的に比べます。
ここがSWOTと相性のよいところです。SWOTが「内部/外部」を分けるなら、五事七計は何を観測し、何と比べるかを細かくします。
SWOTと五事七計を重ねる
たとえば転職を考えているとします。
Strength|自分の強み
「調整力がある」だけでは足りません。
- 将:その強みを意思決定や実行へ使えるか
- 法:その強みが評価される制度や役割があるか
- 道:自分が目指す方向と、その会社の目的が合うか
同じ能力でも、配置が違えば価値は変わります。
Weakness|自分の弱み・制約
弱みを人格の欠点として書く必要はありません。
「営業経験がない」なら、それは地や将に関係する条件です。「平日の勉強時間が取れない」なら、法や地の制約です。
弱みという言葉で自分を責めるより、今の布陣では何が足りないかとして見るほうが戦略へつながります。
Opportunity|機会
ここでは天と地が効きます。
業界が伸びているか。求人が増えているか。技術変化が追い風か。自分の経験が希少になる市場があるか。
「AIが流行っている」は広すぎます。自分が実際に使える機会へ落とす必要があります。
Threat|脅威
競争相手だけではありません。
市場縮小、制度変更、時間制約、資金不足、代替技術、家庭事情。戦略に影響する外部条件を入れます。
一番大切なのは、クロスした後
SWOTでは、四象限を組み合わせる「クロスSWOT」がよく使われます。
- 強み × 機会:攻める
- 強み × 脅威:守りながら使う
- 弱み × 機会:補って取りに行く
- 弱み × 脅威:撤退・縮小も考える
ここからようやく戦略になります。
始計篇の視点を加えるなら、さらに一つ問いを足します。
その戦略は、目的・時機・環境・人・運用のどこで詰まりそうか。
強みと機会がそろっていても、法がなければ実行できません。良い市場でも、本人の時間がなければ着手できません。
五行観測モデルでは「第5層→第6層」への橋
SWOTを五行観測モデルへ持ち込むときは、情報の種類を分けます。
第5層「現在状態」で見るのは、本人の資源が今どの程度出ているか、負荷・持続性・結果がどうなっているかです。一方、市場・制度・時間・環境などの機会や脅威、制約は、6層とは別の前提条件として確認します。
その両方を整理しても、SWOTを書いただけでは第6層「布陣」にはなりません。
布陣では、そこから
- 何へ集中するか
- 何を補うか
- 何を任せるか
- 何をやめるか
まで決めます。
3分ワーク|SWOTを「判断」に変える
紙を四つに分ける前に、最上部へ目的を一文で書いてください。
例: 「半年以内に、年収を維持しながら企画職への転職可能性を上げる」
そのうえでSWOTを書きます。
最後に、四象限の下へ次の三行を追加してください。
- 今、最も勝ち筋がある組み合わせは何か。
- その勝ち筋を止める最大の制約は何か。
- 今月は何をやらないか。
三つ目まで書けたとき、SWOTが資料から戦略へ変わり始めます。
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出典・研究メモ
※SWOTと五事七計は別の理論です。本記事の接続はRayne-Labによる実務上の比較・再解釈です。