自己理解だけで、進路は決められない
「自分の強みは分かった。で、何を仕事にすればいい?」
自己理解のあとに起こりやすい詰まりです。
自分を深く知ることは大切ですが、市場や相手が存在する意思決定では、自分だけを見ても答えは出ません。
営業職が向いているかを考えるなら、自分の特性だけでなく、その会社で求められる営業の形を見る必要があります。独立するなら、自分が提供したいものだけでなく、誰が何にお金を払っているかを見る必要があります。
このとき使いやすいのが3Cです。
3Cを個人向けに置き換える
一般的な3Cは、Customer・Competitor・Companyの三方向から事業環境を見ます。
Rayne-Labで個人向けに使うときは、次のように読み替えます。
Company → 自分
- 何が自然にできるか
- 何を経験してきたか
- 何を続けやすいか
- 何を避けたいか
- 使える時間・資金・人脈は何か
Customer → 相手・市場
- 誰が価値を感じるか
- 何に困っているか
- 何を選ぶ基準にしているか
- どんな条件なら依頼・採用・購入するか
Competitor → 競争・代替案
- 同じ役割を狙う人は誰か
- 代替手段は何か
- AIや自動化で置き換わる部分は何か
- 相手が「別にあなたでなくてもよい」と判断する選択肢は何か
ここで大切なのは、競争相手を敵視することではありません。選ばれない理由を外側から見ることです。
「知彼知己」は、自分を知れば勝てるという話ではない
謀攻篇には有名な一節があります。
知彼知己、百戰不殆。
相手と自分を知れば、百戦しても危うくない、という趣旨です。
さらに続きます。
不知彼而知己、一勝一負。
相手を知らず、自分だけ知っているなら、一勝一負。
つまり『孫子』の構造では、自己理解だけでは片手落ちです。
キャリアなら、自分の資質だけでなく採用市場を見る。商品なら、自社の強みだけでなく顧客の比較軸を見る。発信なら、自分が話したいことだけでなく、相手が何を知りたいかを見る。
個人版3Cで「向いている仕事」を考える
たとえば「人の話を整理するのが得意」という自己理解が出たとします。
自分だけを見ると、コーチ、カウンセラー、人事、コンサル、PM、営業など、多数の候補が出ます。
そこで3Cを入れます。
自分
- 一対一は得意だが、大人数営業は消耗する
- 構造化して説明するのが得意
- 企業での業務経験がある
相手・市場
- 管理職向けの1on1支援に需要がある
- 若手向けキャリア支援は競合が多い
- たとえば「専任人事を置いていない中小企業」を対象と仮定してみる
競争・代替
- 一般的なキャリア相談は大手サービスが強い
- AI相談も増えている
- 現場マネジメント経験と制度設計を組み合わせた支援が少ないかどうかは、競合調査で確かめる
ここまで来ると、「相談が得意だからコーチ」より戦略的な仮説になります。
五行観測モデルでは「己を知る」と「彼を知る」を分ける
第1〜3層は、自分側の観測です。
- 認知
- 動機
- 行動資源
個人版3Cでは、そこへ市場側の条件を足します。
第5層「現在状態」では、本人の資源が今どの程度出ているか、負荷・持続性・結果を見ます。相手・市場・代替手段は本人の状態とは混ぜず、戦略を考えるための外部条件として別に確認します。
第6層「布陣」では、その両方を踏まえ、どの市場へ、どの資源を、どの形で置くかを決めます。
「自分らしさ」を守るだけでも、「市場に合わせる」だけでもありません。両方を見て、接点を探します。
3分ワーク|自分の強みを市場へぶつける前に
今やりたいことを一つ決めます。
たとえば「副業で相談サービスを始めたい」。
三つの欄へ書いてください。
自分
自分が出せる価値を3つ。
相手・市場
相手が困っていることを3つ。
競争・代替
相手があなたを選ばなくても解決できる方法を3つ。
最後に一つだけ問います。
自分の強みのうち、相手が実際に価値を感じ、代替されにくい組み合わせはどこか。
そこが戦略候補です。
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出典・研究メモ
※「個人版3C」はRayne-Labによる応用です。『孫子』や3Cの原典が個人のキャリア分析を直接述べているわけではありません。