資源が少ないのに、大手と同じことをしていないか
人が少ない。予算が少ない。知名度がない。
それでも大手と同じ顧客へ、同じ商品を、同じ媒体で、同じ頻度で届けようとする。
この戦い方では、努力しても差が縮まりにくいことがあります。
総量で負けているなら、総量の勝負をしない。
ランチェスター戦略でよく語られる「弱者は一点へ集中する」という発想は、ここから始まります。
まず区別したい「ランチェスターの法則」と「ランチェスター戦略」
F.W.ランチェスターが扱ったのは、戦闘力と兵力数の関係を数理的に考える法則です。
日本で「ランチェスター戦略」と呼ばれるものは、そこから発展した経営・営業上の応用を含みます。
したがって、「一点集中」はランチェスター本人の一文をそのままビジネスへ移したもの、というより、後世の戦略応用として理解したほうが安全です。
本記事では数式の厳密な適用ではなく、資源が少ない側は戦う範囲を狭くし、局地で密度を上げるという戦略構造を扱います。
孫子・虚実篇の「我専而敵分」
虚実篇には次の一節があります。
我專為一、敵分為十、是以十攻其一也。
こちらが一つに集中し、相手が十に分散するなら、局所では十対一の形を作れる、という趣旨です。
ここで重要なのは、総兵力が十倍になるわけではないことです。
戦う場所を選ぶことで、その地点の比率を変えるのです。
小さな側がやってはいけない「全部取り」
小規模な会社や個人は、機会を逃したくないので対象を広げがちです。
- 全国対応
- 全年代対応
- 全SNS運用
- 全業界対応
- 商品を何種類も作る
しかし、広げるほど一つの場所へ置ける資源は減ります。
大手は複数市場を同時に守れるかもしれません。小さな側が同じ広さで戦えば、自分の資源だけが薄くなります。
「地域」「顧客」「用途」「時間」を狭くする
一点集中というと「商品を一つにしろ」と思いがちですが、絞る軸はいくつもあります。
地域
札幌だけ、特定商圏だけ。
顧客
新任管理職だけ、従業員50人未満の企業だけ。
用途
採用ではなく、1on1改善だけ。
時間
今四半期だけ一つのテーマへ集中する。
絞る対象は、目的に応じて変わります。
「弱者」は人格ではなく、局面の位置
ここでいう弱者は、「能力が低い人」ではありません。
ある市場、ある競争軸、ある時点で、使える資源が相対的に少ない側です。
別の市場へ移れば強者になるかもしれません。
虚実篇の「虚」「実」と同じく、状況で変わる位置として扱うほうが実務的です。
五行観測モデルでは「布陣」の密度を見る
第6層「布陣」で重要なのは、何を持っているかだけではありません。
どこへ、どれだけ置くかです。
木の探索力が高い人でも、10個のテーマへ同時に使えば薄くなります。金の構造化が得意でも、全部の資料を完璧にしようとすれば主戦場へ届きません。
戦略では、強みの有無より資源密度を見る必要があります。
3分ワーク|今の自分は、何か所で戦っているか
現在の重要テーマを書き出します。
仕事、副業、学習、発信、資格、健康改善。
それぞれへ、1週間に使っている時間を書いてください。
次に問います。
- 本当に今週勝ちたい場所はどこか。
- そこへ全体の何%を置いているか。
- 一時的に止めると、最も資源が戻るものは何か。
一点集中は、永遠の専門化ではありません。
今の局面で、一つの場所へ密度を作ることです。
合わせて読みたい
出典・研究メモ
※現代日本でいう「ランチェスター戦略」には後世の経営応用が含まれます。本記事は数学的な戦闘モデルを企業・個人へ直接適用するものではありません。